●空飛ぶ絨毯
絨毯といえば、最初に浮かぶ言葉が「空飛ぶ絨毯」ではないかと思われるほど、子供心に焼き付けられた魔法の絨毯のエキゾティックで、幻想的な印象には強烈なものがあるようです。さて、この「空飛ぶ絨毯」、子供向けの童話としては頻繁に出版されているのですが、原典となっている『千夜一夜物語』あるいは『アラビアン・ナイト』などを調べてもなかなか見当たりません。「アフメッド王子と妖精パリ・バヌー」や「バイバルス王と警察隊長たちの物語」がその源泉で、アラビア語のいくつかの原典から訳された数ある訳本のなかで、フランスのガラン版、マルドリュス版、ドイツのハビヒト版などに掲載されているのみで、一番信頼され普及しているバートン版には「補遺」として収められていることはあっても、その邦訳はないそうです。2004年はフランスのガランがヨーロッパに初めてこのお話を紹介して300年、ユネスコが認定した「アラビアンナイト翻訳記念年」です。『千夜一夜物語』がインドやイランの説話をもとに、バグダード、カイロを経由してアラビア語で編纂されたものであるなら、インドのデーヴァ(神)やリシ(道士)たちが自由に空を飛んだことや数多くの飛天と関係しているかもしれないし、『ラーマーヤナ』の猿王ハヌマーンが中国では孫悟空に変身して絨毯ならぬ金斗雲に乗ってひとっ飛びしたことなどとも無縁ではなく、まさに空飛ぶ絨毯のお話はシルクロードを飛び回っていたようです。
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